滝谷ドーム中央稜・ジャンダルム飛騨尾根
2008年8月11日〜14日
坂地(記録)・吉尾
吉尾さんと2人なので、高速代の安くつく平湯温泉経由で行くことにした。平湯温泉アカンダナ駐車場に1時過ぎに到着。駐車場は午前3時に開くので、早く到着した車がゲートの前に一列になって駐車している。最後尾に車を止めて車の中で仮眠することにした。3時頃ふと目を覚ますと、前に停まっていた車の列が消えていたのであわててエンジンをかけて駐車場の中に入った。ガラガラだったので適当な場所に車を止め、バス停に行ってベンチでもう一度仮眠した。
11日 快晴 夕方にわか雨
アカンダナバス停発4時55分。上高地着5時30分。トイレに行ったり、計画書を出したりして上高地バスターミナル発は6:00。上高地を出る前は山にガスがかかっていたが、歩いているうちにまっ青な空に変わり、明神岳の岩場、前穂東壁、前穂北尾根を眺めながら横尾まで歩くことができた。屏風岩の下では何度も立ち止まり、針で突いたくらいの大きさにしか見えないクライマーを目を凝らして見つけては眺めた。歩くペースが一定しなかったせいか、もともとつりやすい体質なのか久しぶりに荷物を持って歩いたので涸沢ヒュッテの直前で太股がつってしまった。ここから北穂のテン場までは3時間の登り。まだ昼過ぎだが、明日の朝がんばればいいだろうと、吉尾さんに謝って上がるのは明日の朝にしてもらう。時間がたっぷりあるので小屋でカレーを食べてテントを張って中で寝ていると夕立が降ってきた。足がつっていなかったら、雨に遭っているところだったのでラッキーだったのかな。
12日 快晴 夜雨
3時半起床。今日も雲ひとつない快晴である。ゆっくり北穂の南稜を上がっていく。稜線に出たところに荷物を置いて、北穂の小屋の「滝谷ノート」に今日登るルートを書きに行った。一度「滝谷ノート」を見たいと思っていたのに、今はもう「滝谷ノート」はなくなったといわれた。どこへ行かれるのですかと聞かれたので、ドームに行くことを伝えて小屋を出た。北穂の頂上からドーム北壁を見ると、1パーティ、北西カンテにとりついていた。屏風岩を見上げた時は人間が針で突いたぐらいの大きさにしか見えなかったのに、北穂の山頂からドーム北壁を見ると人間が大根の葉にとりついている青虫ぐらいの大きさに見える。ドーム北壁は写真で見ていつかは登りたいと憧れていたのに、人間が風景の中に入ると岩が思っていたよりずっと小さく見えてガッカリでした。ドーム北壁の写真は人間を入れない方が迫力が出るようです。しばらく景色を眺めて荷物を置いたところまで戻り、ドームに向かう。ドームを涸沢側から巻いて最初の鎖場を降りたところが下降点なのでザックを置いて準備をした。何となく踏み跡っぽいところをトラバース気味に下降していって第3尾根を越えるとスッパリ切れ落ちている。40m下に取り付きに至るであろうガラガラの広いテラスが見える。懸垂支点があるとすれば、少し下ったところにある尾根のへこみの裏側以外考えられないので、あそこになかったらどうしょうもないなあと思いながら下っていった。予想通り回りこむとドンピシャで下降支点があった。T2まで20mと書いてあったので、ロープ1本で降りていくと2mほど足りなかった。
バンドをたどって取り付きに行こうとしたら、むこうと違う?と吉尾さんが第3尾根の方を指さしたが、そんなとこ登っていったら懸垂したところに戻ってしまうと、中央稜の方へ歩いていく。すぐに写真で見た取り付きの凹角に着いた。
中央稜取り付きの凹角
ザックの中からガチャ類を出し、靴も履き替えようと中をのぞき込むと・・・・
ゲゲッ!靴が入ってないっ!!
ザックから出して下に置いたのは覚えているが、アタックザックに入れ忘れたらしい。取りに戻るわけにも行かない。1ピッチ目が一番難しいらしいので、僕が吉尾さんのクレッターを履いてリードし、吉尾さんは登山靴で登って様子を見ることにした。1ピッチ目の下部は簡単だが、上部はチムニーに身体を入れると身動きできないので、左側に移ることにした。この1手、吉尾さん登山靴だと苦労するやろなぁー、クレッター返せと言うかもしれへんなぁーと思う。チョックストーンの上に終了点があったが、クレッターを取り上げられる前にできるだけ上まで登っておこうと思う。おかげで2ピッチ目は10mも登らないのに緩傾斜帯に着いてしまった。
ここから滝谷の出合いが真正面に見える。出合いを少し入ったところからずっと上部まで雪渓が続いている。
ここで吉尾さんにクレッターを取り返されたので、僕はジョギングシューズで登ることになった。感覚が変わって登りにくくなるかなと心配したけれどザラッとした岩はフリクションがよく効いたのでクレッターと変わらない岩登りが楽しめた。
4ピッチ目
5ピッチ目
終了点でロープをしまって、ドームの頂上から踏み跡に従って縦走路に降りる。ザックを置いた所まで戻ってくると、どうして僕を置いてったのですかと言いたげな様子でザックの陰から靴が出てきた。
疲れていたけれど、今度はいつ来れるかわからないので吉尾さんが行くと言ったら行こうと思って「北西カンテ行く?」と聞いてみたが、予想通り行かないと言うので、北西カンテはやめて穂高岳山荘のテン場に向かった。
風邪なのか、高さの影響なのか頭が重い。咳をすると痛みが頭にひびく。白出乗越に着いたらへとへとだった。この日はビールを我慢して寝ることにした。
13日 晴のち曇り、夜雨
シュラフに入ってから降り出した雨はずっと降り続いている。隣のテントは寝はじめから出発まで大イビキでまわりに迷惑をかけている。おかげで朝まで睡眠が浅くて寝ているような気がしない。夢の中で、雨が朝まで降り続いたら飛騨尾根に行かなくてもすむのになあなどと考えていた。すっかり寝過ごしてしまって、テントを開けると明るくなり始めていた。今日も雲ひとつない快晴である。吉尾さんが地図を見ながら時間を計算して、飛騨尾根に行ったら今日中に帰られへん...と暗に飛騨尾根はやめて帰ろうと言いたげなそぶりだったけれど、こんないい条件の時に登らず帰ったら後悔するに決まっているので、登ることにする。
ジャンダルムと飛騨尾根
奥穂の頂上の横にザックをデポして、小さなザックに登攀用具を詰めて出発。前回ジャンダルムに来たのは、岩登りも知らない時だったので岳沢側を巻いたが、今回は飛騨尾根の偵察もかねて巻かずに奥穂高側を登って越えてみた。西穂高側のコルに降りてハーネスをつける。β沢の降り口はザラザラ・ガラガラだがしばらく降りていくと石も大きくなって下降しやすくなる。取り付きへは「小滝を越えて左からルンゼが入ってきたところあたりからT3基部にトラバース」するのだが、時間がないのでT3あたりから取り付こうと話し合って、滝の上からトラバースを始めた。テラスについてまわりを眺めると、T3は隣の尾根のはるか下の方に見える。飛騨尾根に取り付いたと思ったのに、ここが飛騨尾根でないとわかって、一瞬ここはどこ?状態になりかけた。でも、よく観察するとどうも飛騨尾根から派生した短い支尾根の先端らしいことがわかったので、T2の下までトラバース気味に登っていって、やっと飛騨尾根に上がることができた。ここから1ピッチでT2に着く。
T2を見下ろす
飛騨尾根は取り付いてみれば3級下程度のやさしい岩だけれど、そんな風に見えない迫力あるロケーションを持った岩場でした。T2からT1に上がるタワーのようにそびえる90mの壁が見えたときはルートを間違ってるんじゃないかと思ったほどでした。(実際は45°ぐらいしかない) ハードじゃないけれど楽しい岩登りでした。またT2フランケはなかなか面白そうだった。(もしもう一度来ることがあれば)次回はT2フランケ、T1フランケを登ってみたい。
吉尾さんも僕も今日中に帰ることはとっくにあきらめていたので、ゆっくり上高地に下りました。小梨平に着いたら真っ暗でしたが、おかげでテント代は取られませんでした。(払いに行ったが閉まっていたのです)
・中間支点が少ないのでカラビナは少なくてもいいと思っていたが、思っていたよりハーケンがあった。スリングをかけられる岩角が多いので、スリングのヌンチャクをたくさん持っていったらよい。確保支点も長いスリングを岩にかけて作った。
・カムの使えるクラックが多いので、キャメの0.4〜2が役にたった。
・最近、細いテープスリングが出ているが、カラビナの通らないハーケンに通すのに便利だった。2本ほど買ってみようと思った。
・基本的に岩は硬くて快適だが登る人が少ないため浮いている石があるので注意すること。
14日 曇り
朝起きると、雨はやんでいましたが、岳は雲の中でした。本当に一番いいときに登れたようです。一番のバスで平湯に戻りましたが温泉は開いていなかったし、レストランも朝定食しかなかったので、上高地のバスターミナルのレストランでゆっくり朝食を食べて来たほうがよかったかも。でも、平湯でゆっくりできたし、ゆったり温泉につかり、のんびりと帰って来ることができました。
(坂地)